戦闘 白兵戦
衝撃は一瞬。
天も地も無いような衝撃が戦艦中を震わせ、ぎゃ、と短い悲鳴とともにあちこちで壁に激突したうめき声が聞こえる。対衝撃体勢が弱く転げたものだろう。
足元から頭から酸素同士がぶつかり合うような微振動が続く中、敵艦と接する通路に集まっていた赤い鎧の侍たちは衝撃が収まるより早く、壁や通路を蹴って走り出していた。
それぞれが下げた数本の刀がガチャガチャと鼓舞の声をあげ、顔の半分を覆うマスクの下で低く唸りが響く。背の後ろでは次々と障壁が下がり、流れ出す空気が走る速度を速める。
まだ抜刀はしない、手だけを軽く柄にかけて敵戦艦へと繋がった通路を走る。
「我等は最後の刀」
「我等は最後の盾」
屈指の戦闘力を持ちながら直接戦闘に出ることがほとんどなかった侍たちが走る。
「我等の後に未来を」
「我等の先に勝利を」
捲れ上がった外壁を踏みしめて飛ぶ。
真空中でも鮮やかに輝く赤い鎧がこすれあう振動。
何処に零れることも無く、己に言い聞かせるような小さな声がざわめきを呼ぶ。
敵艦の床へと足をつく前に、その手は青白い刀を抜き放った。
「勝利を!!」
星の欠片を溶かし込んだ刀が、輝き、小さなったざわめきは勝利を求める為の唸りをあげる。赤き鎧の侍はいっせいに攻撃を開始した。