「来ますッ!」
ぴんと耳をたてた少女の声より早く、攻撃が戦艦を襲う。しかしオペレーターの反射速度は耳が言葉を理解するより早く、咄嗟に戦艦を覆うシールドの発生ボタンを指先に叩きつけていた。滑らかな線をもつ戦艦をシールドが包み込む。
「攻撃防ぎました、衝撃、きます!」
オペレーターたちを庇うようにサイボーグが走り、オペレーターはそのサイボーグを信じて自らの持ち場から逃げることなく指を動かし続けている。サイボーグたちは叩きつけるように波打った空気の振動を受けて、僅かにぐぅとうめき声をあげた。オペレーターの表情が少し曇り、けれどその指は休むこと無くシールドの計算、相手の攻撃、そして次の行動の為に数値を弾き続ける。
「もうちょっと、もうちょっとです」
指揮艦席に座る藩王さくらつかさを衝撃から守るためにサイボーグとして強化された侍が椅子にかぶさるように素早く動き、背中にたたきつけられた重さに耐えている間、くっきりと開かれた目を閉じることなくメインモニターを見ていた。
衝撃が収まる、肺の奥まで流し込むように深く深呼吸をして侍が身を引き、常と同じ場所へと戻り、サイボーグたちもまた元の場所へと戻る。オペレーターの指は尚一層勢いを増し、めまぐるしくサブモニターに窓が開いて閉じ、開いて閉じ、メインモニターへと情報を集めていく。
「反撃へ移る、みな、準備は」
一段高い指揮艦席より流れる落ち着いた言葉は、やはり穏やかで(指は恐ろしい勢いで動いているというのにあくまで静かに)オペレーターたちは一糸乱れぬ優しい声で完了しております、と歌った。
「では反撃へ移る。宇宙特化国の咲く様をとくと見せてやれ!」
凛と宇宙を切り裂く藩王さくらつかさの声が反撃の狼煙を盛大に上げることになった。