FVBの主立った将が居並ぶ中、甲高い子供の声が藩王さくらつかさの到来を告げる。
2人の童女を先に立たせ、華やかな衣装を身にまとった藩王が、優雅な外八文字の歩みでしゃなりしゃなりと・・・・・・この歩みでは時速100mがせいぜいだろう。
「やってられーんっ!」
深紅の着物をかなぐり捨て、黒タイツ姿になると童子の頭を踏み台にしてひとっ飛び。
「おまたせ!」
両手を腰に当て、すっくと立った藩王は、居並ぶ重臣たちにこう告げた。
「戦争だよーん。相手はとりあえず赤オーマ」
その言葉に皆一様に頷いた。既に覚悟はできている。
「で、6カ国と聯合してきた。プラットホームを動かさないといけないからね。ただ、お金が足りなくてさ、また燃料足りないかもしんない」
なんとなくトホホホ〜という空気が辺り一面にたれ込める。それが唯一の原因ではないけれど、お金が足りない最大の原因は罰金の払いすぎだという自覚が誰にもあったからだ。
「まあ、それはそれでおいておくとして」
置いて良いのか?!
「うちはカタパルトがあるからね、余所の国のでもうちのでも、がんがん打ち上げるよ。みんなも最終決戦のつもりであたるように」
「「「はーい」」」
明かりが消え、巨大なバネルスクリーンにデータが次々に映し出されていく。
「敵はこっち。でっかい砲艦は潰したけれど、本隊はまだまだ元気だねー。こいつをまともに潰そうと思ったら苦労するよー」
続いて宇宙ドックから投錨して離れていく宇宙艦の姿が映し出される。
「で、うちの国で完成しているプラットホームは5隻。今、ラインに乗ってる4隻もぎりぎり間に合いそうだけれど、それでも当初の要求水準の50%にも満たないねえ」
また1隻がカメラにパンアウトしていく。
「今のプラットホーム、命名済んでましたっけ?」
忙しくて誰も気が回らなかった点を指摘したのは天河宵だった。いつまでもP-01とかP-02では気の毒というものだろう。
「合歓、東錦、狩衣、白雪桜・・・・・・と、桜花!」
その言葉にどたどたどたーっと周囲がぶっ倒れる。
「なんで! なにがいけないの?!」
憤慨する天河の小袖をみかじだいすけがちょいと引っ張って隅に連れて行き、「そもそも桜花というのはだね」と解説を始めた。
その合間に、きみこが天河の言葉に続いた。
「金鯱、暗黒丸、鉄甲丸、兜丸、勇将丸 、桃花丸 、般若丸、断琴丸・・・・・・サボテンシリーズですよ」
丸が付くところも船っぽい。
結局、命名がどうなるかはわからないけれど、とにかくFVB諸将に緊張はなかった。何か失敗したり間違えたとしたらそれは実力だ。実力を出し切ることが大切なのだ。
その点だけは心配なかった。その点だけは。