空には稲光が走るが、地上では、その雷鳴が轟くのも気づかないほどの戦闘が続いていた。
栗田雷一「右の友軍が囲まれている、援護するぞ!」
光儀「了解!援護します!」
光儀の指示で、犬士たちの掲げる杖が一斉に向きを変え、死角から味方部隊に接近しようとしているアンデッドの一隊に対して光球を放って粉砕する。
休む暇はなかった。
菩鋳螺「凸出部から削っていこう、戦線に切れ目を入れられるなよ!!」
交代で部隊を後方に下げて休憩させる余裕もない。
FVB詠唱部隊は分割したものの、なんとか連携は維持して戦線を持ちこたえている状態だ。防御の薄くなった部分は互いにカバーし合っているということだが、つまりは一箇所が崩れると全体が雪崩を打って崩壊する危険性がある。
つまりは、どの部隊も失えないということだ。
もちろん、誰も好きこのんで戦死して部隊を崩壊させるつもりはないし、そのためには分割した各小隊、そしてやや離れた位置に布陣しているPPGとの連携は要であった。
鍋野沙子「えー。あっちの状況見てきますね。ついでにこっちの状況も伝えてきます」
連絡係、FVBではより優雅に「戦闘伝書使」と呼ばれているが、その沙子は休むことなく戦場を飛び回っており、後にFVBのサムライの間で、「戦場の妖精」と呼ばれることになる。
戦いは一進一退している。
もうどれだけ倒したのか、まだどれだけ倒さなくてはならない敵が残っているかも判らなくなりつつある。戦闘伝書使による主力部隊との連絡が途絶えていたら、統制を失った闇雲な戦いとなって、ゾンビの大軍に呑み込まれていたかも知れない。
栗田雷一「もう少しで、敵の前線を切り崩せるぞ、続けて詠唱ー、放て!」
まだ勝利は見えない。しかしサムライは諦めることなく戦い続けている。