移動中の空母艦内。着々手際よく準備を進める犬士達を見ながら、きみこは今さらながら心の中でひとりごちた。
「まさか私が、初心級空母の艦長だなんて…」
なまじ宇宙艦長の職4持ってた為、藩国の編成から独りあぶれて訪れた帝國軍で賜ったのは帝國軍の最新鋭艦の艦長職だった。まるで失業者が職安行ったら社長に抜擢みたいなものだ。
初めてこの艦橋に入った時は、いかにも優秀そうな宰相府藩国の犬士達の視線を浴び、思わずひるんだ。懐かしの初期アイドレスで参加の母国FVBの犬士さん達が心のよりどころというていたらくだった。ああ、突貫で完成させた機関士アイドレス着て来れてせめても良かった。まだ格好が付く。これが無かったら、犬耳バトルメードで指揮しないといけないところだった。しかもFVBのメードは和服。着物の肩に海軍制服羽織って、艦長帽で指揮を執るって、どこの姐御だ。さすがにそれはどうかと思う。
らうーる「艦長、初心級空母出撃準備が整いました。ご指示を」
オペレーターのらうーるの声に、我に返った。
きみこ『はっ!ダメダメダメダメダメ! 何をグルグルしてるんだ私! ここはもう戦場なのに』
こんな弱気でどうする。私はこの艦の皆の命を預かっているのだ。そして、はるかなteraの全ての人々の期待が、私達にかかっているんだ。
大丈夫。宇宙艦長学校でエステル教官に教わったことを思い出せ。だいたい、私は空母の指揮は経験済みだ。ミアキス空母型の初陣で、ちゃんと艦長を務めて艦を生還させた。
それに。ぽち王女からいただいた光が、心にある。王女の勇気を引き継がなくては。
勝利をつかみ、teraを守るために。
よし。心の準備は、できた。
きみこ「わかりました。対空監視を怠らないように。」
えるむ「対空監視、了解です。」
きみこ「この一戦には、teraの全ての人々の命がかかっています。必ず、勝たねばなりません。」
きみこ「大切な人達を守るために。」
きみこ「皇帝陛下と王女殿下のお心にそう為にも。皆の奮闘を期待します」
らうーる『アイ、マム。我らはこの命を賭してでも本艦と、そして艦長と共に戦い抜くことを誓います。』
えるむ『…えっと、でもまだ行動開始までは余裕があるかと思われますので、少しリラックスなさった方が〜。』
きみこ「ありがとう。そうね、準備はあなた方に任せておけば安心ね」
らうーる「格納庫の部隊よりメッセージが。『貴艦は我々の帰る場所だ。だから必ず守り抜く、安心しろ。』だそうです。」
らうーる「…守ってくれる味方がいるというのは心強いものですね」
きみこ「その彼らが存分に働けるように、的確な指示を出す為に。万全の準備をしましょう。」
えるむ『はい、時間まで出来る限りの準備を整えましょう。』
きみこは微笑んで皆を見守った。
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