越前藩国
最悪だ。
目的を叶えるには、危険な戦場を突っ切って移動しなければならない。
そして彼女は何があっても守るべき存在だ。
だから。
『命令する。お前らの命に代えても彼女を護れ!!』
「「「Sir ! Yes,Sir !」」」
「すいません。皆さん……!」
守られる女は、半泣きになりながら謝る。
「私に、力が、無いばっかりに……」
悲痛な嘆きに、通信の声は答えない。
応えるべきは、併走する者達であるからだ。
一人の男は、琴弓の矢を間近に受けつつ言った。
「あんたに力がねぇだって? そんなことはねぇさ。それとも―」
えぇ。と他の誰かが頷き、敵の攻撃を受けて震動する大地の上を駆け抜けながら続ける。
「―私達は、貴女の力に、なれないのでありますか?」
誰かが道ふさぐものに攻撃を行い。
誰かが飛来する弾丸に防護を固め。
誰かが先行し道を見つけて疾走続け。
「いまいましい異星の魔女どもとの戦争でも、捨てきれなかった男の意地がある」
「知ってるぜソレ。レディーファーストってやつだろ」
「ボディガードは壁が御仕事!」
「前歴経験一切不問、必要資格は銃弾も通さぬ自慢のボディ。エスコートはサービスだ!」
「だったら力を見せな!野郎共!」
「姐さん見てると間違ってる気もしてくるが……男は悲しいねぇ」
「おぉっと、空気読めてないナンパ野郎共が、俺らの姫さん目当てに寄ってくるぜ!」
「ふん。もてそうにない面構えじゃないのさ。野郎共、蹴散らしてやんな!」
「「「Yes,Mam !」」」
「……いや、だから、なんで姐さんが先陣切っちゃってんだよ。
まぁ、ともあれオイラもYes,Mamってことで」
そして誰もが祈りを捧げ、語りかける。
どこかでダイスを握るキミに。
最後の最後に、ほんのわずか。勝機を引き寄せると信じて。
おい、と一人が銃弾をばらまきながら通信の声に叫んだ。
「そっちも気張れよ!彼女を舞台に連れて行くのは俺達の仕事だが、彼女の手を取って踊るのはアンタらの仕事だぜ!」