「総員、降下準備完了。では、行ってくる。」
「降下カプセル射出を開始します。いってらっしゃい!」
軌道降下前の指揮官と兵員輸送船オペレータの無線での会話 52607002
・軌道降下兵について
1.軌道降下兵の概要
軌道降下兵とは、文字通り惑星の静止衛星軌道上より降下する陸戦部隊のことである。
彼らは、惑星を占領するために、他の部隊に先駆けて降下し、地上の重要拠点を制圧したり、後続の部隊が展開できるよう橋頭堡を確保することや、宇宙要塞の制圧が主な任務となっている。
核弾頭や大出力のレーザー光線が飛びかい、星がいとも容易く砕ける宇宙戦闘にあって、何故彼らのような部隊が必要とされるかと言えば、住む事が可能な環境や、戦略的な価値を持つ施設・設備類がとても貴重であるからに他ならない。
2.軌道降下兵の特徴
さて、軌道降下兵の大きな特徴として「パワードスーツ」を使用する点が上げられる。
パワードスーツとは、簡単にいえば「着用した人間の能力を強化する服」であり、無名世界では「ウォードレス」がこれに該当する。軌道降下兵の使用するものは、第6世界に存在する「甲殻型ウォードレス」と同じ外骨格式パワードスーツであるが、任務の性格上重武装、重装甲で、宇宙で長時間活動しても支障のない生命維持装置、地上や宇宙で素早く機動するためのバーニア、多数の通信機器・センサー類等を備えており、非常に強力なものとなっている。操作について、基本は着用者の動きをパワードスーツ側が感知して動く方式となっており、「着て動く」だけでほとんどの操作を行えるようになっている。一部の複雑な操作については、音声コマンドやモーションコントロール形式で行う。このパワードスーツを身に着けて軌道降下兵たちは、敵の最中に突入していくのである。
使用する武装については、白兵、近距離、中距離、遠距離の各レンジでの攻撃を行うためのものがそろっており超硬度カトラスから始まって、12.7mm機関銃、20mmバルカン砲、小型ミサイルポッド、電磁式擲弾投擲機、レーザー銃など多彩なものがそろっていて、作戦や役割分担などで装備を変更する。
3.軌道降下やそれ以外の場所での運用について
次に、軌道降下兵の見せ場である惑星への降下は、以下のような手順で行われる。
まず、目標となる惑星の近傍まで兵員輸送船で輸送される。次に、惑星の周回軌道に乗るまでに降下を行う軌道降下兵は、完全装備状態のパワードスーツ(予備の武器・弾薬を格納した武装コンテナ込み)を装着した状態で一人ずつ降下用のカプセルに封入される。但し、制宙権が確保できていない場合は近傍へ接近する前に封入される。
惑星の周回軌道に乗り、降下開始予定位置についた段階で、兵員輸送船から降下カプセルの射出が開始される。このとき、射出される降下カプセルの中にダミーも混ぜられて、地上からの迎撃にあっても本命のカプセルが地上に到達できるよう、囮として迎撃を妨害する様々な仕掛けが施されれている。
射出された降下カプセルは、予めカプセルのコンピュータに入力された降下地点に到達するべく、減速のための逆噴射を行いながら突入を開始する。
大気圏突入後は、落下軌道を調整しながら、逆噴射やパラシュートなどで減速を続け、カプセルによる保護が必要なくなる速度と高度まで到達した段階で、爆破ボルトによって降下カプセルを分離し、パワードスーツ本体のバーニアによって最終減速を行い、地上に着陸する。
地上着陸後は、速やかに作戦行動を起こし、目的が達せられるか撤退命令が下されるまで戦闘を行い、作戦終了後に兵員輸送船から派遣されてくる回収艇に収容される。余談ではあるが、兵員輸送船には、それぞれテーマソングと言うべき曲が決められており、隊員が配属された艦や回収廷を間違えないように、出撃前や回収時に流される。このテーマソングは大抵一般の歌曲の中から決められるが、某国の国歌が使われることがあることもある。
軌道降下以外の作戦では、何らかの輸送手段(揚陸艇、輸送機、輸送トラック)によって前線まで運ばれ、戦闘に参加することとなるが、その攻撃力から敵前線の突破などに用いられることが多い。
4.FVBの軌道降下兵について
FVBの軌道降兵は、宙侍をベースとしているため白兵戦が得意であり、使用するパワードスーツも東方の鎧武者風の外観をしており、超硬度太刀を固定装備としている。宙から降下してくるその様から、過去の英雄になぞらえて「宙の神兵」と呼ばれている。
待機中の彼らは精鋭として常に力を発揮できるよう、日々訓練に明け暮れている。その訓練は体の一部が機械であるがゆえに無理がきいてしまうため、過酷で容赦の無いものになっている。
日々のランニング、訓練場での剣術や格闘技の訓練、パワードスーツの整備や、動かなくなったパワードスーツからの脱出訓練、無重力・低重力下での戦闘訓練、宇宙船や要塞への斬り込み訓練、地球上空からの軌道降下や、輸送機からの空挺降下を含んだ各種降下訓練等、豊富なメニューが組まれており、特にFVB特有の入り組んだ地形と生態系の只中に、ナイフ一本で放り出されるサバイバル訓練は、その過酷さで知られている。
こうした訓練の中で、決して諦めないタフな精神と体を鍛え上げ、誰にも負けない戦闘技術を身に付けることで、「宙の神兵」は作り上げられる。敵を打ち砕く、ただその一撃のために。
■設定文章(担当:栗田雷一)
■イラスト(担当:さくらつかさ)
■編集・構成(担当:曲直瀬りま)
☆要点