「NWFって何のこと?」
「え、あ、無名騎士藩国のお祭り・・・・・ですけど」

今はFVBのきみこはニューワールド・チャットで会話しているときに、いきなりそんな質問をされてドキドキしてしまった。え、なに、なにか間違ったこと、いいました!?
「そんな略称で言われてもわかんないよ」
え、え、だってNWFって、主催している無名騎士藩国さんが使っている略称じゃないですか? 勝手に略してませんよお〜。
もしかして、全然知名度高くない? 今、真っ最中なのに、これじゃあまるでAI地球デザイン博の二の舞じゃない!

お祭りにはコンセプトが必要だ。たとえば世界規模の博覧会なら「人類の進歩と調和」、学園祭なら「RIDE ON TIME」、神社のお祭りなら「五穀豊穣」と祭神だろう。
一見種々雑多な要素が押し込まれているように見えても、それが空中でばらばらにならないためには共通したテーマが必要なのだ。それは漠然としていながらも、なんとなく雰囲気が伝わる程度であるべきだろう。
人ごとであっても、やることやらねばと盛り上がってしまうと火傷するのが解っていても鎮火しない性分である。せめてFVBからは派手に協賛してやろうとたちまち走り出すことになる。

NWFのお祭り会場の一角に、わんわん帝國最新鋭のA74ケントが舞い降りた。その数は3機。標準的な小隊編成である。ケントは着陸すると手際よく荷下ろしを開始する。背嚢から、コクピット内部から、ダンボール箱に押し込められた食材やら宣伝ポスター、垂れ幕、天幕などが地上に並べられていく。FVBは出店決定が遅れたので、速度優先でI=Dを投入してきたのである。
荷下ろしが済むと、2機は再び宙へと舞い上がり、後にはフェスティバル仕様にカラーリングが施された1機だけが残された。本体部分は桜色に、シールド部分は鮮やかな新緑の碧、それらのすき間から顔を出す関節部分は黒と、まあ、桜餅カラーであった。そのケントを中心に天幕が張られ、FVBのブースが設営されていった。なんというか、物産展というか、アンテナショップみたいである。
今はテントの下に侍・花魁などのコスチューム撮影会コーナー、ヤガミ饅頭や純米酒などの売店、さらにはI=Dから電源を引いた電気釜でおにぎり用のご飯がどんどん炊かれている。
深夜にトラック隊が到着すれば、1日遅れでもう少し本格的なレストランや温泉体験コーナーも準備できることになっている。
「FVB製湯ノ花のお風呂にゆっくり入ってもらって、出てきたらお座敷で筍の浅漬けと山菜御膳とかとろろ定食を堪能してもらうわけよ☆」
陣頭指揮をとるきみこの妄想構想に限りはない。
銭湯に黄金風呂とセットで下品な椅子が置かれて物議をかもしたり、食材展示コーナーの自然薯が暴れて大騒ぎになるのだが、それはまだ知るよしもない。

(曲直瀬りま記す)

This page is NWF出店編.