「砲撃戦するにしたって、
  核ミサイルを自衛用にしてるようなやつらですよ。どう仕掛けるんですか」
「なあに、やり様はいくらでもあるさ」
       砲台設計開始時、時雨とみかじだいすけの会話 52507002

「花とお米の国」と言う現在の景観からが想像しづらいであろうが、FVBは機械工学を有する技術国家であった。旧来の主力であった機械化宇宙歩兵「宙侍」の存在からすれば当然の事であったが、それは喧伝される事は少ない。
理由は、戦争の花形と言えるI=D技術において比較的後発の国家だった事によるのであろう。FVBで使用されたトモエリバーは全て国外から購入したものだったし、それらは全て決戦FVB終戦時に整備能力の不足から破棄されている。しかし、それはFVBの技術が他国より後進している事を意味するわけではない。
「宙侍」が「機甲侍」から再発展する形で特殊部隊として復活。
後ほねっこ男爵領が奪還される頃には星への扉である宇宙開発センターが建設され、それを守るべく六連装超長距離機関砲<迦具土>が開発された。
そう、他国とは明確に異なる形で。FVBには独自の軍事技術体系が存在していた。

そしての技術体系のひとつの集大成ともいえる機体が、今生まれ出でようとしていた。
大きさから言えばそれはI=Dと同じくらいであるが、腕はない。
みやげ物の箱のような胴体。その先端には僅かに突起が伸びているが、鉄の塊に過ぎないそれを顔とは誰も呼ばない。
そんな歪な体躯を支える足は、余りに長く。止めに、四つもあった。
これまでのアイドレスの兵器開発からすれば余りにも異形な姿。
それをFVBでは、宇宙に煌く戦の花『月下美人』と呼んでいた。



全体図アニメ


【以下、わんわん帝國軍務省に提出された「月下美人」要綱書より抜粋〜】

運用目的:多目的宇宙プラットホームへの設置を目的として開発された砲台。

防空火器によるプラットホームの護衛を主眼に、誘導弾による制宙支援、対艦攻撃も場合によっては行える。

機体概要:体高は通常I=Dと同程度であるが四脚故に体積は倍以上。

形状は大小のユニットが組み合わさって出来た本体に、機体固定・移動用の四脚がつく。姿勢制御ガス噴射装置と、スラスターも装備しているが積極的に使うものではなく、沈艦から退避する程度の推力しかない。
本体は全てユニット化されており、コックピットにセンサーユニット、ウェポンコンテナを積み上げ、最後に足をつけると言う工程で生産される。
各部位は切り離しが可能で、破損し動作不能な場合や誘爆の危険がある際はパージできる。

★各ユニット内訳

本体ユニット:コックピット上にセンサー、下部後方に主機関を取り付けて構成されるコアユニット。
装甲ユニット:本体を保護する防御用のユニット。純然たる装甲。
主砲ユニット:本体の中段・両側面にマウントされる。
ミサイルユニット:本体背面からせり出し上部に至る最も目立つ装備。巡航ミサイル「桜花」を搭載するが、そのためそれしか目に付かない印象を与える。
防空ユニット:センサーの側面に装備される防御兵装。
脚部ユニット:四足。機体固定と、艦体上移動の相反する要求を満たす為に装備された。火砲、特に桜花の射撃時に装置自体が旋回機構を持たない為方向決定時に最も用いられる。艦上を移動する際は必ず3脚を接地する為に高速には移動しないが、舷側を変える程度の移動である為そう支障はない。

★武装内訳

対艦巡航ミサイル「桜花」:ミサイルユニットに二門マウントされる対艦ミサイル。
元々はFVBで現在構想中の次期主力機動兵器に装備される予定だったものであり、最初から宙間戦闘を想定した設計になっている。
ミサイル自体にアポジモーターを装備し、画像認識またはオペレーターのナショナルネット経由による直接誘導で高い命中精度を誇る。

光学兵器拡散粒子擲弾装置:左右の防空ユニットに一門ずつ装備。レーザーを拡散させる微粒子を擲弾に詰め、発射する。
完全防御は不可能であるが敵光学兵装を減衰させ、紛体は先の戦闘時に観測した敵レーザー波長を最も拡散する成分配合となっている。

液体炸薬低反動砲:左右の主砲ユニットにそれぞれ二門装備される、砲台の主兵装。
酸化剤を含む炸薬を用いた運動エネルギー兵器。
弾体自体極めて軽い上に炸薬量も微小であるが、これは宇宙戦、特に防空を主眼に置いた為である。
敵核ミサイルを迎撃する目的で開発された為である。
対艦としては無力に等しいが、敵が偵察機・機動兵器程度なら砲撃に用いることも可能。
バレルはライフリングを持たない、大気中で運用する機体であったならば全く別の主砲となっていたであろう。

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