○防空機関砲システム(4カ所:10億わんわん)

「敵、30機以上」

「偵察機と思われます。数は31、32!?」
「来たか・・・・・・・」
 中央指揮所に陣取ったみかじは次の一手を決めねばならない。
 相手は偵察機。詳細なデータを与えては、次に到達する本隊がこちらの重要拠点を片っ端から叩きつぶしてしまうだろう。かといって迎撃することによって、こちらの完成したばかりの防空システムの手の内をさらけ出してしまっては本隊迎撃に難が生じる。しかし・・・
「やるしかないな」
 みかじはこれだけのことを即断した。
「全力で迎撃だ。出し惜しみするな。偵察機がデータを送り出す前に潰してしまえ。1機も残すな! なあに帝國全体で迎撃するんだ。ノルマは2機だ。その倍は潰してみせろ!」


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【概要】
 現在、FVBが採用し国内4箇所に設置されている防空システムは機関砲によるものだけです。しかし機関砲といっても大陸間弾道砲並のシロモノです。そうでなければ、宇宙から侵入し、地表50Kmを時速2万Kmで接近する偵察機など迎撃できるはずもありません。
 機関砲の常識を超えた機関砲、それが六連装超長距離機関砲<迦具土>です。
 <迦具土>は砲身自体に炸薬を9個持ち、砲弾通過後順次点火することにより尋常でない初速を得ます。その砲身6本をリボルバー形式で束ね上げることで、さらなる連射能力をも確保しました。

【灼熱の火炎神】
 <迦具土>の射撃時の砲炎はその砲身長の5倍ほどの火柱となり、それが続けざまに吹き上がる様子から火之神の名前が採用されました。その砲塔基部には、火之神の分社も祀られています。

【砲弾と装填】
 遅延散開榴散弾を使用することを前提にシステム構築されていますが、通常弾のみを用いても対空砲撃程度はこなせる能力はあります。その際は砲身回転の必要がないため、次弾装填時間は10秒ほど短くなりますが、弾幕効果は若干低下します。
 砲弾はやや特殊で可燃薬莢を用いているため、廃莢機構は存在しません。また装弾は専用の装弾車でおこなうことになりますが、このとき以外ではめったに90度以上直立状態を見ることができません。長射程ゆえ基本的に仰角45度以上では用いる必要がないためです。
 計算上では十分に軌道迎撃は可能であるとされていますが、射程と同様、実際の運用がまだおこなわれていないため、確実なことは解っていません。今後の運用の中で研究していくことになるでしょう。

【開発史】
 六連装超長距離機関砲<迦具土>は、対猫用決戦兵器として設計された大陸間弾道砲の末裔です。設計後の評価において、移動はほぼ不能な上に軌道計算が不完全では全く使い物にならない、移動目標に対して用いる場合は回避運動をしない物にしか使い道がない等、全く実用性がないと評価され、そのまま凍結されていました。
 しかし、その長射程を活かせる侍によるデータリンク機能や宇宙開発センターの運用開始などの諸条件が整って、ようやく軌道上迎撃に有効性を認められ建造に至りました。
 唯一、当初の構想と異なったのは、砲径が500mmと当初の半分になったことで、これに対して「宙侍を撃ち出せない」というクレームがFVB参謀本部から出されたという噂もあります。これに対しては公式に「人間大砲は幻影使いの領分であり、侍の仕事ではない」との回答が出されています。

【運用】
 水平線上あるいは地平線上から出現し視界から消えるまでわずか数分という相手を迎撃しようというのであれば、水平線に出撃した瞬間に捕捉し射撃を開始しなければ当たるものではありません。そして目標に接近して破壊しようというミサイルに対して、機関砲はとにかく弾幕を張りまくることで、敵に損害を与えようというのが機関砲の思想です。
 ですから、敵機の現在地、高度、速度を測定し、目標の到達予想地点に弾幕を撃ちまくるために、管制センターの索敵・計算能力はもちろん重要ですが、同じくらい機関砲自体の装填速度や砲弾速度も重要となってきます。
 FVBにおける防空システムは、これまではサムライネットワークによって集積された情報が地下参謀本部「啓の間」に集約され、そこからの指令によって動かされていました。しかし宇宙科学要塞(宇宙開発センター)完成以後は、指揮管制の中枢がこちらへ移管され、啓の間はバックアップ・システムの役割が与えられています。
 基本的にネットワークによって防空司令部からのコントロールで動く機関砲ですが、司令部との連絡が途絶したり敵の電子妨害やハッキングが仕掛けられた際に各個に対応する場合に備えて、独立した射撃統制レーダーと敵味方識別装置や照準器が設置されています。いかなる事態に対しても最後まで攻撃能力を保持するためです。
 こうした能力を備えた機関砲とそのシステムは、西部工場地帯後に建設されたマスドライバー付近、航島、王城東の湖畔、中部森林地帯の国内4カに所堅固なコンクリート製の砲塔(白壁土蔵状の迷彩あり)上に設置され、互いの有効覆域を重複させることで防空網を構成しています。

【スペック】
砲身長:12500mm
口径:500mm
射程距離:500Km超(推定)
弾種:対空遅延散開榴散弾
弾槽数:6
次弾装填所要時間:16秒
砲身交換所要時間:7日(全能力射撃後換装の必要有り)
特殊:国内施設・宇宙開発センターの軌道追跡装置と連動で砲撃が可能




(文:曲直瀬りま/絵:みかじだいすけ)
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