些末な話で恐縮だが、ステージ2でアイドレスが2つ獲得できることになったとき、FVB〜麗しき勇気ある花たちの国においてもどれを取得すべきかで激論が交わされた。筆者などは、ここで「ええ?3つ取得できるんじゃないの」などとFEG所属の嫁がもらした素朴なひとことに思わず殺意を覚えたものだが、それはさておく。
 結論から言ってしまえば、「宇宙軍」と「バトルメード」という、いかにもな選択になってしまったのであるが、もしここで3つ選択できたとしたら、3番目の候補としてはウォードレスダンサーが最有力だった。
 考えてみれば恐ろしい話である。

 ここで話はいきなり、後に「悪夢の水泳大会」として知られる事件の直後にまで遡る。
 出征した藩王はまだ帰国されていない。
 大隊長であるからして、すべては大隊、派遣軍の後始末がすべて終わってからでないと戻れないのだろう。
 経乃重蔵は大族ではあったが、多くの者が出征した後を守って頑張ってきた。その仕事にささやかながら満足感を得ていたし、藩王さまが凱旋した暁には祝勝式典で盛り上げて祝ってやろうと張り切って準備を進めていたのである。
 そんな経乃が一足早く帰還した三梶大介から気になる話を聞いた。戦さは宰相シロが発表したような勝ち戦ではなかったというのだ。
 確かに敵は駆逐し、味方は無傷だった。しかしそれは半ば相手の自滅の結果であり、FVB派遣軍にしてもついに戦線にはたどり着けなかったというのである。しかも、このことを聞き及んだ宰相のご機嫌はかなり悪かったらしい。三梶はFVB中隊副官を勤めた人物である。その言葉に嘘や誇張があるとも思えなかった。
 経乃重蔵は祝勝式典の準備をしていたユキシロtaisaを呼んでひそかに自分の疑念を伝えた。しかし彼らとてバカではないものの、窮乏状態ではないが、さりとて裕福でもない一藩国の身であるからして、とりうる選択肢はほとんどなかった。
 あれこれ想像に想像を積み上げ、憶測に憶測を重ね、辿り着いた結論は「祝勝会を派手にやろう」というものであった。
 嘘を真にするためには、せいぜい派手に戦勝祝いを盛り上げて、誰にもあれが失敗であったなどと言わせないことだ。できるかどうかは別であったが、急進的な、あるいは破滅的な意見を押さえた上で彼らに残された唯一の道だった。
 だから、帝國として戦勝パレードを行うと通達が有ったときには瞬時に手を挙げて参加を表明した。カウントにして0.3秒のプロフェッショナル。

 問題はそれからだった。
 準備にかけられる時間も予算もほとんどない。しかし可能な限り、派手に、豪華に人々にアピールするものでなくては意味がない。この国でほとんど無尽蔵に手に入るものは、花と藁だけなのだ。素材で勝負するといっても、他国のように美男美女があふれてい・・・・・うぐぐぐぐぐ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぎゅるるるる・・・・・・・・・・・・・・・し、失礼いたしました。
 まあ、そういうわけで、小学校や保育園の子供まで動員した上で、もっぱら花と藁でのパレード準備が進められたのである。これも一種の学徒動員に違いない。

 そこでIFの話となる。
 もし、ウォードレスダンサーが配備されていたとしたら・・・・・・・、間違いなくサンバ・ダンサーにされていたに違いない。「ダンサーだから同じよね」とかなんとかいって。恐ろしい。
 いや、サンバ・ダンサーならまだマシだ。ひょっとしたら、もしかして、ボン・ダンサーとかアワ・ダンサーにされていたかもしれない。絢爛豪華の意味を取り違えた山笠カーニバル……。
 実際の話、機甲侍をあちらこちらから集めてきた花で飾り付けてはみたのだ。そして、こっそり地下連絡路で行進訓練してみたりもした。その上で、さすがにこの菊人形はやめてくれとのサムライたちからの懇願で中止になった経緯がある。
 いやはや、まったく冗談ごとではないのである。
 最終的には常識的な線に落ち着いた。とはいえ、最後の最後でとびっきりの爆弾が破裂した。
 パレード直前まで、誰も藩王の衣装について考慮していなかったのである。いつもの花魁装束だとか、侍の裃だとか、そもそも直前まで査問会議で拘束されていたのだから軍の正装であるはずだとか、それぞれが勝手に納得していたのである。つまり、藩王のコスチュームについては、まったくの白紙で藩王の勝手に任されてしまっていたのであった。
 ああ、恐ろしい。
<「戦勝パレード」へつづく>
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