今回、藩王の命により遂行された「究極温泉探し」について、文族:道化見習いがここに記すことにする。


○国民番号:17010
国民名:栗田雷一
族称:文族 
所属藩:Floresvalerosasbonitas 〜麗しき勇気ある花たちの国〜
魂の故郷:島根県
根源力:3500(封土・購入分/初期/獲得:2500・1000/0/0)
【国民紹介】 喚ばれて思わずやってきてしまったお人よし。性格は真面目だが、少しものぐさ。絵を描く事ができないので、今は文士の皮を被ってる。実は体をサイボーグ化した凄腕の剣士であるが、本人はそれを表に出そうとしない。

でも、駄目人間(笑)


○国民番号:17012
国民名:道化見習い
族称:文族(地戸) 執政(天戸)
所属藩:Floresvalerosasbonitas 〜麗しき勇気ある花たちの国〜
魂の故郷:高知県
根源力:6800(封土・購入分/初期/獲得:0・100/4000/2700)
オーマネーム:
【国民紹介】 面白さを貪欲なまでに追い求める男。西に面白いものがあると聞けばひたすら西を目指し続け、東に面白いものがあると聞けばひたすら東を目指し続ける。だがしかし、面白いものが好きだからといって本人が面白いとは限らないのがなんとも悲しい所である。



○参加冒険:7:究極温泉探し
○栗田雷一:2500:東国人+サイボーグ+剣士
○道化見習い:6700:東国人+サイボーグ+剣士
○冒険結果:大成功:得たお宝:資源12万t:ユニークな結果:なし
コメント:温泉を掘るつもりがレアメタルの鉱床を発見しました。



ある日のことである。
栗田雷一と道化見習いは朝も早くから任務だと呼びだしを受け、謁見の間に顔をだしていた。
なんで私が……。雷一は面倒臭げに頭を掻くと、いまだ内容も知らされていない今回の任務をどうやって断ろうかあれこれ考えつつ、藩王であるさくらつかさ王と向き合っていた。
道化はというと、いまだわからぬ任務に対して、面白いといいなぁ、とぼんやり天井を眺めながらあれこれ想像を膨らませていた。
「では、今回の任務を発表しまーす」
明るい声で元気よく、さくら王が任務について話し始める。
「今回、雷一さんと道化さんの両名は、最近、新たな温泉の源泉があるんじゃないかと噂されてるブロック4に温泉探索に行ってもらいます。以上」
「…………」
静まり返る謁見の間。
「え、いや、その、さくら王……」
「温泉っていいよねぇー。身体は休まるし心は落ち着くし」
雷一の問いかけなど耳にも入らず、ひとり楽しそうなさくら王。
「さ、さくら王、失礼ですが、我々の職業をご理解しておられますか?」
道化が焦りながらさくら王に尋ねる。
「ん? 知ってるよ。機甲侍でしょ」
そう、雷一も道化もこの国の勝利の剣にして守護の盾、己が身体を機械化し、命尽きるまで戦い続けるツワモノの中のツワモノ、機甲侍なのである。当然、今回の任務、機甲侍に相応しい戦場だと予想していたふたりにとって、まさか温泉探索を命じられるとは予想外も予想外であった。雷一はどうしたものかと頭を痛め、道化は、こういう面白さは求めてない、と同じく頭を痛め、ふたりは共に目を見合わせた。
「今回の任務はね、もうこれでもかっていうくらい機甲侍が条件にぴったりなのよ。探索のためのセンサーでしょ、見つかった場合の発掘作業でしょ、それからそれから――」
「わ、わかりました、もういいです。が、道化殿はともかく、別に私でなくとも他に適任者がいくらでもいると思いますが?」
さくら王の言葉を遮って、雷一が上手い具合に任務を回避しようとする。
「ちょ、ちょっと待ってください雷一さん。私だって嫌ですよ。戦場で戦いに明け暮れる日々を夢見て機甲侍にまでなったのに、なんで、温泉なんぞ掘らにゃあいかんのですか」
道化は、お前だけ任務逃れなど絶対させん、と必死になって雷一に食いさがった。
ふたりが任務を回避しようとあーだこーだ言い合っていると、
「あぁ、もううるさいッ! とっとといくッ!」
こうして、さくら王の鶴の一声で雷一と道化は温泉探索の旅にでることになった。

    *

ふたりは準備を整え、嫌々ながら出発し目的地のブロック4に辿り着いた。
ブロック4は元々、様々な温泉が湧き出る場所で国内外問わず人気の高い場所である。だが、もうすでにたくさんの温泉が見つかっていることから、ふたり共、いまさらなぁ、と諦めた感満載で源泉求めて探索を開始した。
機甲侍の技である天眼を使い感覚を増強しセンサーの性能を高め、周囲の状況を感知・把握しながら得られた情報をデータリンクを通じて互いにやりとりしながら源泉を調べていると、雷一のセンサーにある地点が強い反応を示した。
「道化殿、ちょっときてください」
雷一の呼びかけに道化がやってくる。
「本当にありましたね……」
ふたりは顔を見合わせて声もなく笑うと、
「では、さっさと掘りますか」
と発見できた嬉しさで嫌がっていたことなどすっかり忘れ、反応のあった地点を準備していた道具で掘り始めた。
やる気になったふたりはすごかった。
機甲侍のありあまるパワーに任せてひたすらに掘る、掘る、掘る。もう、互いに言葉など交わすこともなく、ただひたすらに笑顔で源泉求めて掘りまくる。これはもう、すごいというより異常だった。掘られている穴の周りにはすごい量の土砂が山となって積まれていた。だが、なかなか源泉には行き着かない。
「なぜだ……」
ふと、我に返った道化が作業する手を止めた。
「こんなに掘ってるのになんで見つからないんだ……」
いままで一心不乱に掘り続けた反動がここにきて道化の心を襲い始めた。
「いや、そもそも機甲侍が温泉掘りなんてやってる時点で……」
穴の中、ブツブツと呟き始める。
「違うんだ、私の求めている面白さはこういうのとは……」
穴の中、呟きながら体育座りを始める。
「落ち着け道化殿ッ!」
道化の異常に気づいた雷一が声をかけるが道化には一向に届かない。
「……仕方がない」
雷一は座り込んでしまった道化の前に立つと、とりあえず、
「帰ってこいッ!」
殴ってみた。
おもいっきり、道化の頭を全力で。
地面に倒れふす道化。少し痙攣しながら倒れたままの道化。
「……や、やりすぎたかなぁ」
雷一の表情に焦りが見えたとき、
「私は一体……」
うつむけに倒れてた道化がゆっくりと立ち上がった。
「お帰りなさい」
「え? えーと、ただいま?」
雷一の優しい微笑みに意味もわからず道化は応える。
「なんか、すごく頭が痛いんですが……」
「さぁ、きっともうすぐ源泉が見つかりますよー。頑張っていきましょう」
何事もなかったかのように雷一は作業を再開し、道化も流されるまま作業を再開した。
そして、ついにそのときはきた。
地面めがけて突き立てた雷一のシャベルが、いままでとあきらかに違う音を穴の中に響かせたのだ。
「こ、これは」
雷一が地面に顔を近づけてじっくり確認する。
「金属か? いや、しかし、このような金属、いままで見たことがない」
道化も雷一に近寄って地面にある金属を確認する。
「これは、報告しておいたほうがよさそうですね」
とりあえず、ふたりはここで作業を中断し、さくら王へ報告するため都に戻るのであった。

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