チャットでの参加者の会話の前後に挟んでSSっぽくするための短文です。
【1】
FVBに地上施設は少ない。緑豊かな山野を可能な限り残すため、施設の大部分を宇宙または地下に置いているからだ。そして一見蜘蛛の巣のように地下を走っている連絡洞窟だが、子供の頃から叩き込まれているから目隠ししても迷うことはない。
【2】
気がつかなかったとはいえ、ここまで状況が悪化するまで放置していた責任は重い。この失点はもはや戦いにおいて取り返すしかない。
しかし、先日の先行偵察で自らの力不足も痛感している。帝國の宰相府、諸藩国、そして共和国陣営の助力を得てさえ、確実に勝てるという保証はないのだ。ただ周囲と連携しつつ、己のすべてを発揮するだけである。
【3】
敵はゾンビというものの、かつての知人であり、部下であり、もしかしたら家族であるかも知れないのだ。しかし、そこで臆していては彼らを救うことなどできはしない。
敵を人と思わず、アンデッドとさえ思わず、ただ「倒すべき敵」として認識するだけである。
【4】
冒険艦!
頼もしいFVBの力でありながら、この戦いでは助けになるどころか敵に使われているという。なんということだ。
今は地上にはいつくばる身で、とても冒険艦の居る天には届きはしない。せめて、この恥辱を目の前の敵にて晴らさせてもらおう。
【5】
「大丈夫。みんなを助けに行ってくるよ」
宰相府に難を逃れた国民たちにしっかり応え、戦装束に身を包んでゲートへと向かう。続々と集まってくる仲間や犬士たちの目は怒りに燃えている。
目の前の敵を倒し、仲間を、民を救うのだ!
【6】
「今のうちに腹ごしらえしておけ。腹が減っては戦はできん。次のメシは勝ち戦の宴のときと思え!」
侍大将の言葉に、一同はうむとうなずき、犬士やカカシロイドが配って回る熱々の握り飯をほおばった。勝ち戦を祈念しての赤飯である。さらに揚げたての串カツが配られる。「苦しみに打ち勝つ」との験担ぎだ。
【7】
「みんな、がんばってきて!」
宰相府に待機を命じられた藩王さくらつかさの言葉に、一同笑顔で応えた。
「任せてくださいって、オウサマ」
「ちゃんと留守番しててくださいよ!」
いわば祖国奪回に出陣するFVBの陣営に、藩王や摂政の姿はない。それぞれ別の場所での義務を果たしているのであるが、その内心忸怩たる思いであろう。
だが、それでも彼らはサムライたちを信じていた(理力使いだけれど)。